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遺伝子は、変えられる。 あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実 [ シャロン・モアレム ]

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感想(2件)

このサイトは『遺伝子は変えられる』という本を要約したものです。仕事にかまけて大事なことをスルーしてきた私は、定年退職を機に『遺伝子問題』に取り組み始めました。自分の勉強も兼ねていますが、忙しいあなたの為に、この本を是非読んで欲しいがために、長々と要約しました。それでも、要約しきれない重要な箇所はたくさんあるので、一家に一冊この本をお勧めします。

この本には沢山の病名、遺伝子番号、遺伝子の働き、化学物質名などが出てきますが、そのまま転載します。それぞれの着色や挿絵は分かりやすくするために、私が施したものであり、青色の文章は私の感想です。

 

第9章 それでもゲノムをハックする?

―遺伝子検査がもたらした新たな選択肢と新たな差別―

《肺がんとタバコの複雑すぎる関係》

がんは現代の黒死病だ。という事自体、ある意味で人類の努力の成果を表している。何と言っても僕らは長い道のりを経て、感染症の大部分を手なずけられるようになったのだ。今日の先進国では、僕らを襲う最大の脅威の一つはドブネズミやダニ、ウイルスや細菌によってやってくるものではなく、僕ら自身に潜んでいるものだ。

近年もっとも横行している悪性のキラーは肺がんだ。とは言え、肺がんにかかる人の80%から90%は喫煙者であるものの、喫煙者が必ず肺がんになる訳でないことも分かっている。しかし、喫煙は「ロシアンルーレット」であることも事実だ。さらには高くつく嗜好でもある。それに、副流煙は他の人―たいがいの場合とても身近な人たち―をより大きなリスクにさらしてしまう。

では、一生タバコを吸っても肺がんにならない人がいるのは何故だろうか?今のところまだ、大きなリスクに最もさらされている人を予測するための、遺伝的、エピジェネティクス的、行動学的、環境学的要因の組み合わせは見つかっていない。こうしたこんがらった網をほどくのは簡単なことではないのだ。

この面における真剣な科学的研究はあまりなされていない。タバコを唇の間に挟んでも大したことにはならない、などという事をある種のグループの人たちに伝えることになるような、道義に反した研究に精を出したいという研究者はあまりいないからだ。

《「遺伝情報差別」で訴えられた鉄道会社の愚》

産業革命が起きて以来、とりわけデジタル産業革命以降、二つの大きな変化が起きた。僕らは座りがちになり、日々の暮らしもどんどん単調な繰り返しになっていったのだ。同じことを何千回も何百万回も繰り返して体を酷使するようになったのは、ほんのここ数百年の事だ。手根管症候群から腰の痛みまで、僕らの関節と体は、その付けを支払っている。

1849年にアメリカ中西部で創設されたBNSF鉄道は、今日、北米有数の貨物専用鉄道企業に成長し、その線路はアメリカ国内28州とカナダの二つの州の大地を切り裂いて走っている。

鉄道にかかわる仕事は肉体的にきつい仕事になる。従業員の一部が仕事関連のけがにより一時的労働不能休暇を取っていたことが判明したのも当然と言えば当然だった。しかし、経営陣はコスト削減の道を探り、労働衛生基準の改善に気を配ることなく、反復的で怪我を引き起こしやすい作業について交代でやったりすることも促さなかった。

そうするかわりに、BNSF鉄道の経営陣は、従業員の遺伝子を追いかけたのである。アメリカ雇用機会均等委員会によると、その後ほどなくして、手根管に起因する労働障害を訴えた従業員は、採血検査をするように強要されたという。血液はその後―当人の認識も同意もなく―遺伝子的に手首の痛みとけがにかかりやすいかどうかを示すDNAマーカーについて調べられたそうだ。検査を拒否したらクビになると考えた従業員は殆どが血液検査に応じたらしい。

しかし、反撃を決めた者もいて、米国雇用機会均等委員会が、血液検査は「障害を持つアメリカ国民」法に抵触するものとして、その従業員に代わって大義の追及に取り組んだ結果、BNSFは220万ドルの和解金を支払わなければならなくなったのだ。

《「オバマケア」の意図せぬ盲点》

この事件は、2000年代初頭に起きた事件だ。今日、従業員は、アメリカ連邦法によって職場における遺伝情報差別から守られている。この法律「遺伝情報差別禁止法」(GINA=ジーナ)の趣旨は、雇用と健康保険に関して、遺伝子による差別から人々を守ることにある。

だが残念なことに、現在GINAは生命保険と身体障がい保険に対する差別からの保護者にはなっていない。たとえば、寿命が縮まったり障害をより持ちやすくなるBRCA1遺伝子の突然変異を受け継いだように人に対して、保険会社は未だに合法的に高額の保険料を請求したり、保険販売を拒否したりすることができるのだ。

そして、状況はさらに恐ろしいものになりうる。匿名の、短い情報を趣味の、ウエブサイトに入力した研究者たちは(こうしたサイトのユーザーは、祖先を探すために、ますます自分の遺伝情報を入力するようになっている)、その患者の親類グループを簡単に特定することができた。そして、年齢、居住州といった、科学者たちが共有する匿名の患者情報に通常含まれていデータをさらに補えば、数多くの個人の正確な身元を特定することができる。

ブログ、フェイスブック、ツイッターなどのソーシャルメディアは、遺伝子サイバー探偵にとって、潜在的に非常に豊かな情報源になりうるのだ。もう既に3分の1以上の雇用主がソーシャルメディアで見つけた情報を利用して、応募者を排除していると答えている。

《遺伝子検査が生んだ「プリバイバー」という新しいクラスター》

アンジェリーナ・ジョリーはBRCA1遺伝子の検査を行った後、乳がんにかかる確率は87%、卵巣がんにかかる確率は50%だと告げられ、2013年に両乳房の切除術を受けた。

医師は長年病気を取り除くための手術を行ってきたが、状況は一変した。決断を迫られた女性のうち、約3分の1は予防的乳房切除術を選択している。こうして、彼女たちは全く新しい患者グループを構成することになった。プリバイバー(「あらかじめ」を意味する「pre」と「生存者」を意味する「survivor」を組み合わせた造語)だ。

プリバイバーはすでに数千人を超えている。結腸がん、胃がん、膵臓がんといった他の疾患でも、遺伝子的要因が作用しているらしいことがますます明らかになるにつれ、このグループはほぼ確実に拡大していくだろう。

《「遺伝子保護局」のチェックリストに学ぶ、人生を変える方法》

「行動を起こす」という事は、何も、乳房切除術、結腸切除術、胃切除術といった根治手術だけを指しているのではない。なぜなら、切除して取り除いてしまうわけにはいかない器官もあるからだ。

他に取ることができる先制攻撃的行動には、監視またはスクリーニングの機会を増やすこと、予防薬の投薬計画に従う事、そして可能であれば、潜在的に遺伝子に害を与える行為を控えることなどがある。

だからこそ、「犯罪チェックリスト」が、自分が遺伝で受け継いだものの面倒をみる、重要なメモになりうるのだ。自分の遺伝子を大事に扱う事が出来なければ、うっかりそれを変性させてしまう危険性があるのだから。

*航空機による移動中に浴びる放射線、*日焼けで浴びる紫外線、*カクテルに入っているエタノール、*タバコの残留物に含まれる化学物質への暴露、*殺虫剤とパーソナルケア製品に含まれる化学物質。こうしたものはみな、あなたのDNAを損傷しかねない、よくある危険因子の一つだ。日々どのような暮らしを送るかによって、ゲノムをどれだけ大切にできるかが決まる。

 

 

 

 

 

僕らはより良い知識を身に着けることが必要だ。また遺伝子の理解が深まるにつれて加速度的に変化していく将来、他の人々がこうした情報をどう使うことになるのか認識することが必要だ。「他の人々」とは、医師、保険会社、企業、政府関連機関、そしておそらく、あなたの愛する人も含まれる可能性が高い。

ぼくらは、ものすごいパラダイムシフトが生じる瀬戸際に立っているだけではない。多くの人が、もう既にその向こう側に身をとうじているのだ。

【この章で取り上げなかった他の項目】

  • タバコ業界、欺瞞の歴史―なぜ自ら率先して害を研究するのか?

  • もし婚約者の母親がハンチントン病だったとわかったら?

  • ゲノムをハッキングすべきか、すべきでないか

  • アンジェリーナ・ジョリーの「ブレーキが壊れた」遺伝子

 

次の第10章につづく。

 

 

『 遺伝子は変えられる』から
2019-03-09 lucy.in.the.sky

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