2013年 憧れのスウェーデンを訪ねる
旅の目的は「福祉政策」を知る事だった。北欧の3月はまだとても寒かった。幾つかの高齢者施設や認知症施設を訪問したが、その前に北欧の景色を少しだけ提供したい。


もう3月も半ばを過ぎているのにと思っていたら、緯度が日本よりはずっと高い国だったのだ。どうりで寒い筈だ。車窓から見た川面が凍っている。
まるで「魔女の宅急便」のキキが飛び出してきそうな街並み。




「ガムラ・スタン」と呼ばれる旧市街の観光地
美しい旧市街地には個人住宅の建設は禁止されているそうだ。








スウェーデンの今
スウェーデンの面積は日本の国土にもう一つ北海道を足したような、日本とはあまり変わらない面積だそうだ。しかし、人口は日本の12分の1。街を歩いていても、人口密度の低さを感じる。人口密度が低いと国全体が静寂だ。
首都のストックホルムは北欧で最も大きな都市だが、それでも日本の渋谷や新宿などとは比較にならないほど静かだ。
《首都ストックホルム》
重厚感のあるどっしりとした印象の街並みが心地良い。歴史的な建築物が多く、どれも清潔で汚れていない。スウェーデンの人は日本人と気質が似ているという。口数が少なく礼儀正しい、バス停でもきちんと並ぶ。そういう几帳面さは似ている。しかし、スーパーへ入ってみると派手な商品の宣伝文句がない。繁華街にも派手な看板はない。人々にも浮足立った軽率さは感じられない。食事のメニューはいたって質素だ。
民族的な気質というものは本来のものだろうが、それ以外は政治がもたらす社会的な構造からくるものだろう。
《街角にあった「ホームレスのフォックス」の意味》
この銅像が置いてある場所は人目に触れることがないような街の隅ではない。旧市街の賑やかな街の一角だ。誰もが「おやっ?」と目を向けるような場所だ。
作者はイギリスのローラ・フォードという女性の彫刻家だ。彼女の作品は動物が多く、社会風刺が原点のようだ。北欧の国々に展示品が多い。
貧富の差が大きくはないと言われるスウェーデンでもホームレスはいる。日本ほどではないが、イギリス出身の作者が「福祉国家」でさえ、という意味があるのかもしれない。この繁華街に場所を決めたのはスウェーデン国民だ。なんと度量の大きいことだ!日本人はとても真似できない。
《スウェーデンの政治と経済》
-
一応、立憲君主制国家である。元首は国王だが、日本と同じ「象徴」であり儀礼的職務のみ行う。
-
1932年以降、社会民主労働党政権。
-
EU加盟国だが、ユーロ導入はしていない。
-
キャッシュレス化が進み、現在の現金流通量は1.4%。(日本は19.9%)
-
先日話題になった人体にチップを埋め込むサービスが普及している。
-
国民番号制が徹底しており、それに基づく納税管理等々の行政管理のもとに「高福祉高負担」国家の運営が行われている。
-
全国に「コミューン」という基礎自治体が290存在する。
《スウェーデンの社会保障》
-
高福祉高負担国家 : 租税率と社会保障拠出金を入れるとなんと50%を少し超えるほどの税金負担となっている。しかし、その恩恵がすごい。納めた税や保険料の内の45%はその年のうちに本人に還元され、残りの3.8%は生涯にわたって本人に還元され、残りの18%は他者への再配分となっている。
-
社会保障制度 : ♦児童手当、両親手当・・・子どもが16歳までの金銭支援、こども一人当たり480日分の育児休業支援。♦住宅手当・・・住居を持つことの支援。♦年金・・・全国共通制度。世界で4位、日本は14位(16カ国中)高額所得者は年金額が0の人もいる。♦医療費・・・20歳までは無料。♦教育費・・・大学院まで原則無料。♦介護費用・・・ほぼ無料。
-
高齢化問題、移民問題 : スウェーデンでも例外なくその問題に悩んでいる。
《スウェーデンの老人介護事情》
スウェーデンでは親を介護する責務はコミューンにある。子供への扶養義務は1956年に廃止された。
スウェーデンでは「寝たきり老人がいない」というのは本当だ。スウェーデンでの終末期は数週間だ、という事らしい。
-
在宅介護が基本 : 高齢者施設もたくさん存在するが、基本は在宅だ。その支援もすごい。家の改築費、もちろんバリアフリー費用、安全安心対策(AI技術の応用を含め)も徹底している。一日に何度もコミューンから介護士が派遣され、訪問介護や生活支援を受ける。
-
シニア住宅 : 55歳以上入居可能な高齢者向けマンション。
-
特別な住居 : 自宅での生活がこれ以上困難と認められた人のための「最後を過ごす場所」となっている。ワンルームのアパート型だがプライバシーが保護されている。
-
高齢者特別住居 : ヨーテボリ市の場合(下の写真)。入居者360名に対して360名のスタッフ。「住居」であるために住宅手当が出る。慢性疾患、認知症、老人精神病のそれぞれの棟がある。